20日の国連安全保障理事会は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が、敵国であるロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使と同じテーブルで向かい合う異例の機会となった。ゼレンスキー氏は侵略の不当性を突き付け、日本や米欧は対ロシア非難を展開。出席した約60カ国からロシアを擁護する声はほとんどなく、国際社会での「孤立」が際立った。
「なぜウクライナの大統領が優先されるのか」
開始早々、ネベンジャ氏が、安保理の理事国より先にゼレンスキー氏が発言することに反発した。議長を務めたアルバニアのエディ・ラマ首相が「特別な運用ではない」と反論すると、ネベンジャ氏は「議長の汚点だ」とまくし立てた。ラマ氏は「それには解決策がある」と切り返し、「ロシアが戦争をやめることだ。そうすればゼレンスキー氏がここに立つことはない」と一蹴し、異例の幕開けとなった。
ゼレンスキー氏は英語で演説した国連総会から一転、ウクライナ語で語り始めた。「ロシアは少なくとも数万人の我々の市民を殺害し、家を破壊して数百万人を難民変えた。犯罪的でいわれのない侵略だ」。演説中、ロシア代表団に厳しい視線を送る場面もあったが、ネベンジャ氏らはうつむき加減で目を合わせることはなかった。
岸田首相は「ロシアは無条件に軍を撤退させなければならない」と強調し、「第2、第3のウクライナを生み出してはならない」と訴えた。ブリンケン米国務長官は「我々は傍観せずに立ち上がるという明確なメッセージを送らなければならない」と呼びかけた。
侵略に中立的な立場をとる新興・途上国「グローバル・サウス」からも批判や懸念の声が相次いだ。ガーナのナナ・アクフォアド大統領は『ロシアの侵略は明らかに間違っている』と強調し、ブラジル代表は「民間のインフラの破壊は人道危機を悪化させる」とロシアを批判した。
ロシアと歩調を合わせてきた中国は「すべての当事者は自制し、緊張を高める行動は避けるべきだ」と欧米をけん制するにとどめた。
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は、ゼレンスキー氏の退席後に姿を現し、「ウクライナを支援する欧米が世界的な紛争のリスクを高めている」と約25分間にわたって演説で批判した。ロシアを擁護したのは同盟国のベラルーシなどに限られた。
読売新聞