東日本震災の発生から13年。
甚大な被害を受けた岩手、宮城の両県では2月時点で、身元不明の遺体が計53人に上る。「身元追跡に区切りはない」。年月の経過とともに寄せられる情報が減る中、両県警で犬歯に当たる捜査員は身元の特定に向け、粘りの活動を続けている。
岩手県警は震災後、身元不明者の特定に向けた「身元追跡班」を設置した。昨年6月には母系の親戚にまで範囲を広げて血縁関係をたどる「ミトコンドリアDNA型鑑定」を活用し、3人の特定に至った。
県内で身元が特定されていない遺体は47人。発生直後は所持品から特定に結びつく事例もあった。県警捜査一課の下野祝彰第2検視官(42)は「資料の多くは津波被害や時間の経過で入手困難となっている」と実情を語る。
県警は2014年から毎年、身元不明者に関する相談会も実施している。昨年9月には、相談に来た親族から新たに1人の口腔内細胞のDNA資料を得ることができた。下野第2検視官は「わずかな情報でも寄せてもらえれば、身元の特定につながる可能性がある」と強調する。
6人の特定に至っていない宮城県警では、県警捜査一課の「身元不明・行方不明捜査班」が身元解明に取り組んでいる。班長の石川勇輔検視官(49)は「最後の一人まで(身元不明)遺体や骨に名前を返してあげたい」と力を込める。
遺体の発見場所から被災地点を推定する「マッピングポインティング」と呼ばれる捜査手法なども採用し、20年には2人の身元特定に至った。石川検視官は「諦めないで活動を続けることで特定につながった」と振る変える。
宮城県警は震災後から、身元不明者に関する情報を求める相談会を実施し多ものの、相談件数はゼロだった。立ち寄った人からは「まだ活動していたんだ」との声が上がった。
「広報をしなければ風化してしまう」。石川検視官は、身元につながる情報を得る機会が減って現状に危機感を募らせる。県警は今後、身元不明者のs婦策に関する取り組みの周知に力を入れる考えだ。
時事通信