連日の猛暑で、電力不足の懸念が高まっている。8日には東京電力管内で冷房の使用が急増して電力需要がひっ迫、中部電力から電力の融通を受ける事態が起きた。今後も厳しい暑さが見込まれるが、政府は夏の節電要請は行わない考えだ。発電所の稼働再開で救急力に余裕が生まれるとの判断だが、老朽発電所が停止するリスクもあり、安定供給の確保には不安が残る。

「今後も厳しい暑さが見込まれるため予断を許さない状況だ」。斎藤健経済産業相は日の記者会見でこう述べた、電力の需要状況を注視する意向を強調した。
8日の猛暑で東電管内は冷房需要が急増し、電力使用率は一時95%に達した。送配電会社の東電パワーグリット(PG)は隣接する中部電力から電力融通を受けた。東電PGが他社からの融通を受けるのは約2年ぶりのことだった。
東電と中部電力が折半出資する発電会社JERA(ジェラ)も火力発電所の出力を増やす対応を取り、斎藤氏は「安定供給に支障が生じることはなかった」と説明した。その上で、これからも「安定供給の確保に万全を期す」と力を込めた。
一方で、斎藤氏は夏の節電要請は必要ないとの考えを重ねて示した。ケイサンショウハ月、3年ぶりに10電力管内の全てで夏の節電要請を見送ると決めていた。
10年に1度の猛暑を想定しても、電力需要に対する供給余力を示す予備率は安定供給に最低限必要な3%を上回る見通しのためだ。7〜9月で予備率が最も低いのは各電力とも7月で、北海道、東京などは4・1%中部、北陸、関西などは10・4%を見込んだ。
点検や補修を終えた火力発電所が稼働することで供給が向上。同時に企業や家庭で節電志向が高まって需要が減り、需給が安定するとみている。
そうした中でも「仮に厳しい場合は、あらゆる手段を講じる」(斎藤氏)として、電力融通や火力発電の供給増加のほか、揚水発電の活用などの供給力対策を総動員する構えだ。
ただ安定供給確保には不安も根強い。東電は老朽化した火力発電所を抱え、安定稼働を懸念する向きもある。地震などの災害リスクで、政府関係者は「切迫度が増せば『電力供給ひっ迫警報』などで節電を求める可能性もある」と話した。
産経新聞