ヨルゲン・バトネ・フリードネス委員長は「被団協に核兵器のない世界を実現するための努力と、核兵器が二度と使用されてはならないことを証言によって示してきた」と受賞の理由を述べた。
日本被団協は、東西冷戦下で米国が54年にビキニ環礁付近で実施した水爆実験をきっかけに、被爆者援護や核兵器廃絶の実現を目指し、56年8月に結成された。「ノーモア・ヒバクシャ」を合言葉に、国内外で被爆体験の証言活動に積極的に取り組んできた。核保有国と非保有国が原則5年に1度、核軍縮を協議する核拡散防止条約(NPT)再検討会議に05年以降、代表団を派遣。被爆者自らがスピーチして原爆の実相を伝えたほか、会場の国連本部で原爆展を開いてきた。

国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」とも連携して運動を展開し、17年に国連で採択された核兵器禁止条約の前文には「ヒバクシャの苦しみに留意する」との文言が盛り込まれた。条約は、推進国・地域の数が発効に必要な50に達し、21年1月に発効した。
委員長は授賞理由で「何千もの(原爆)目撃者の言葉を提供し、核軍縮の差し迫った必要性世界に思い出させてきた」と評価した。
ウクライナ侵攻を続けるロシアが核兵器使用の脅威を高めるなど、核をめぐる国際情勢は緊迫化している。委員長は「現在進行中の戦争で、核兵器を使用するという脅しも行われている」と非難。「核兵器は数百万人を殺害し、気候に壊滅的な影響を与える可能性がある。核兵器は我々の文明を壊滅しうるのだ」と警鐘を鳴らした。
日本被団協の田中てるみ代表委員(92)は「核兵器の実態はあまり多くの人に知られていないが、受賞をきっかけに世界中の人に注目してもらえるだろう。被団協は高齢化が課題だが、来年の被爆80年に向けて活動を進めていくエネルギーをもらった」と話した。
授賞式は12月10日、ノルウエーの首都オスロで行われる。賞金は1100万スウエーデンクローナ(約1億6000万円)。
核軍縮関連では、「核兵器なき世界」を唱えたオバマ米大統領(当時)が09年に、核兵器禁止条約成立に貢献したICANは17年、それぞれ受賞した。
毎日新聞