
【全然痛くなかった】
長野県長野市の仁科医院では、10月からフルミスとの接種を始めた。同医院ではインフルエンザワクチンを接種する記者の長男(9)に、注射型とフルミスとのどちらを接種したいかを聞くと、「痛くないから」とフルミスとを選んだ。
フルミスとは、針のない注射器のような形状の器具を鼻の中に1センチほど入れ、左右の鼻に1回ずつ噴霧した。長男は「鼻の中に水が入ったような感じはしたけど、全然痛くなかった」と話した。
【1回の接種で済む】
仁科医院副院長で小児科医の仁科範子医師は、フルミスとは痛くないことに加え、1シーズンで1回の接種で済む特徴があると説明。一方、注射型は12歳以下の場合は1シーズンに2回の接種が推奨されている。さらに、注射型の効果は約5か月だが、フルミスとは約1年とされている。仁科医師は「注射が嫌いな子供たちが心身ともに苦痛なくワクチン接種を受けることができる」と同医院で採用し、注射型と選べるようにした。
【注射型より費用は高額】
ただ、フルミスとは注射型よりも費用が高い。価格は病院によって異なるが、仁科医院では注射型が1回3630円に対し、フルミスとは1回8800円だ。それでも、同医院が確保したフルミスと70人分の予約枠は10月下旬までにすべて埋まってしまう人気だった。
【針刺し事故リスク軽減】
フルミスとを製造販売する製薬大手の第一三共(東京)によると、フルミスとは昨年3月に厚生労働省から製造販売承認を受け、今年10月に発売した。対象は2〜18歳。針を刺さないため、子供の恐怖心軽減のほか、医療従事者にとっても針刺し事故のリスクをなくせるメリットがあるという。
【予防効果は変わらず】
予防効果については、試験の結果から、従来の不活性化インフルエンザワクチンと「同様の有効性が期待できる」と説明。感染経路となる鼻に直接ワクチンを噴霧するため、鼻の粘膜の感染防御効果が高まるという。
副反応としては、鼻水や花図真理、関、のどの痛み、頭痛などの症状が現れることがある。また、まれにショックやアナフィラキシーなどが現れることもあるという。
【日本小児学会の考え方】
日本小児学会は9月、医療機関に向けたフルミスと使用に関する「考え方」を公表した。毒性のい弱いウイルスを使用しているため、、接種を受けた子供は「ワクチンウイルスを最長3〜4週間排出する可能性がある」と指摘し、妊婦や免疫不全患者などには、従来の不活性化ワクチンのみを推奨。その他、ぜんそく患者や授乳中の人、周囲に免疫不全患者がいる場合なども不活性化ワクチンの使用を推奨している。
【どう選ぶ?】
仁科医師は、インフルエンザワクチンについて「接種したからと言って絶対にかからないということではないが、重症化を防ぐことができるといわれている」と説明。そのため、接種後も「手洗いやうがいなどの感染予防対策は必要」と強調する。また、フルミスとの場合は、子供が激しく泣くなどして鼻水が多いとワクチンがうまく入らない可能性もあるので「子供にとってどちらが適しているのかを選んでほしい」と話した。
信濃毎日新聞デジタル