80歳になっても自分の歯を20本以上保とうという「8020運動」。食べ物をしっかりかめるため、歯の数が少ない人に比べて生存率が高まるとのデータもある中、8020達成者には噛み合わせの悪い人が少ないことが報告されている。人生100歳時代を迎え、健康寿命の観点から矯正歯科治療を選択するシニアが増えつつあるようだ。
■機能改善を重視
「ここ十数年、40代以上で矯正歯科治療を受ける人が増えてきた感覚がある」
そう語るのは、日本臨床矯正歯科医会の会長で、のむら矯正歯科(東京都狛江市)の院長、野村泰世さん。同医会が会員診療所に行ったアンケートでは、大人(20歳以上)の初診相談件数は、平成20〜30年の10年間で2倍近くに増加。動機を聞くと、「見た目の改善」が最多だが、「機能改善」「長期的な口の健康維持」といった健康を意識したものも計3割以上に。特に50代では初診相談が男女とも大幅に増えており、関心の高さがうかがわれる。
東京都内の60歳のパート女性は、歯がデコボコに生える「叢生(そうせい)」に悩み、子育てが一段落した56歳の時、みむら矯正歯科(東京都西東京市)で治療を受けた。「介護をしている母親の様子から、かみ合わせが悪いときちんと栄養摂取できないことを痛感したことも大きい」と振り合える。治療の際、「負荷がかかりすぎた奥歯がすり減っている」と指摘されたが、約2年間の治療後は「あご全体の負担が減ったと感じる」と話す。
同歯科で52歳の時に治療を始めた情報通信業の女性(60)は、上の前歯が突出する「上顎前突」を、歯の矯正とあごの外科手術を併用した治療。奥歯がしっかりとかみ合うようになり、「歯を食いしばることで、以前よりも体に安定して力が入るようになった」と語る。


■長期的なメリット
歯の健康は、高齢になると食べる力の維持に欠かせない。8020達成者は、10〜20代でかみ合わせが悪い人よりも、かむ力が強いとのデータもある。
野村さんによると、大人の矯正歯科治療は特定の派への負担を減らして歯を長持ちさせる。加えて、「将来、歯が抜けるようなことがあっても入れ歯が作りやすく、インプラント治療もしやすい」と説明する。
また、歯並びが良くなれば磨きやすくなり、歯を失う要因となる歯周病のリスクも下げることが出来るという。
ただ大人の矯正治療は治療期間が長くなる傾向がある。子どもと比べて歯を動かしづらく、土台となる歯茎ががすでに歯周病にかかっていた場合、先に一般紙化で治療を要するためだ。
このため、野村さんは「一般紙化などとしっかり連携できる矯正歯科医を選ぶことが大切で、事前にじっくり医師と話し合って、納得した上で治療を受けてほしい」と強調する。
また、専門性の高い領域にもかかわらず、現行の制度では矯正歯科治療の経験のない歯科医でも「矯正歯科」の看板を掲げることができるため、注意が必要とも。
野村さんによると、日本矯正歯科学会では認定医や臨床指導医などの資格を設けており、学会のホームページにそのリストを掲載している。また、日本論証矯正歯科医会のホームページでは会員医院の検索ができるという。
叢生を治療した前での女性は「矯正により人前でためらわずに笑えるようになった」。気持ちが前向きになったことも明かしてくれた。
産経新聞
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