死亡したのは府立支援学校の高等部3年の男子生徒(大阪府大阪狭山市)。発達障害があり、7月13日、親知らずを抜くため、障碍者向けに治療を行う堺市堺区の市重度障害者歯科診療所を受診した。
専門医によると、発達障害などがあり、痛みに敏感でじっと座るのが難しい患者らには通常、全身麻酔下で抜歯などの治療を行う。チューブの挿入ミスがないかをチェックするため、血中の酸素飽和度や呼気中の二酸化炭素濃度をこまめに確認する必要があるという。
診療所から遺族に提出された報告書などによると、歯科医が生徒の家族の同意を得て、同日午後1時過ぎ、親知らずを抜く手術に先立ち、全身麻酔を実施。麻酔で自発呼吸ができなくなるため、肺に酸素を送るチューブを鼻から入れたが、低酸素状態に。血中の酸素飽和度は正常なら96%以上とされるが、20%台に低下していた。生徒は約1時間半後に心肺停止状態となり、市立総合医療センターに搬送されたが、8月9日、低酸素脳症で死亡した。
救急隊員は搬送時に生徒の腹部が膨張していることに気づき,チューブを挿入し直したという。
遺族側によると、診療所から連絡があり、両親は事故の数日後、歯科医らと面会。冬至の経過を期した報告書を渡され、搬送先の病院からチューブを誤挿入した可能性を指摘されたとして謝罪を受けた。生徒が亡くなった8月にも面会し、改めて原因を聞いたが、「判断ミスだった」と繰り返され、具体的な説明は無かったという。
日本歯科大の砂田勝久教授(歯科麻酔学)は「血中の酸素飽和度が下がった時点でチューブが 食道に誤挿入された可能性を疑い、挿管し直す必要があったのではないか」と話している。
堺市重度障害者歯科診療所は、市歯科医師会が2008年に開設。ホームページには全身麻酔について「体の動きが亡くなり、治療を安全に行える」「気管挿管を行うので、呼吸は完全な管理が行える」と記されている。市歯科医師会は読売新聞の取材に「何も答えられない」としている。
亡くなった生徒の父親(48)は「抜歯しようとしただけでなくなるなんて、だれが想像できただろう」と無念の思いを口にした。
生徒は両親と妹との4人暮らし。自宅ではハンバーグなどの得意料理を家族に振舞い、特別支援学校では野球や卓球に打ち込んでいた。
抜歯手術の当日の7月13日、母親が診療所内で待っていると、救急車が突然到着し、顔が真っ青になった生徒が運ばれていったという。
父親は「息子には明るい未来があると信じていた。診療所は原因を調べてきちんと説明すべきだ」と訴えた。
読売新聞
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